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こんにちは。ヨッチです。


長年勤めて来た会社を定年退職し、その後に転職する話はよくあることだ。働き続ける選択肢として、最も容易と思われるのは再雇用であるが、60歳で転職するにはそれなりのスキルが必要。また自分で起業することはサラリーマンにはハードルは高い。


今回、ご紹介するのは、筆者の知人で、ある会社の管理職が定年退職後に転職したときの話である。





再雇用を断る

まず、それまでの会社を新入社員から定年まで勤め上げており、なぜ再雇用の道を選択しないで、会社を退職し、わざわざ転職の道を選択したのか?


理由は、そもそも、長年勤め上げて来た会社に対して不満を持っていたようだ。彼の会社は大手のエンジニアリング会社の子会社で工事部門を担う会社であり、某工場に施工会社として常駐している。そして彼は長年、責任者として現場事務所を任され、工事のメンテナンスに関わっていた。ところが、定年近くになって現場事務所を後輩に譲って、本社の安全管理部門へ異動となったのだ。


元々、現場の方がやりがいもあり、前向きになれるはずであったが、通っているうちに、本社に対する不満をこぼすようになった。そして、その鬱積した不満はいつか会社を辞めて、他の常駐協力会社に転職することをイメージしていたのであった。


金銭的には、会社に残って再雇用で働く場合は、給与は下がっても6割から7割程度だろうと言っていた。そんなに悪くはない。もっと給与を下げて再雇用するところはいくらでもある。


一方、転職先の方がもっと給与は下がるかもしれない。それでも転職を決めたのは、会社の彼に対する、給与以外の処遇であったり、収益に対する会社の考え方や上司との意見の食い違いだったかもしれない。

 


転職先を決める

そして、彼はなぜ、同じ敷地内にある常駐協力会社を転職先に選んだのか?


その常駐協力会社は、メンテナンスを行う会社であるが、以前に勤務していた会社と比べると、会社の規模としては大きくない。当然、彼はその会社も同じ敷地内にあるので良く知っている。前の会社からその転職先にも、工事内容により、工事の施工を発注している。


転職先の社長もまだまだ若く、会社設立から数年は経ってはいるが、これからチカラをつけていこうとしている会社である。


その会社を転職先とすれば、元々好きな、現場での仕事が出来るし、彼の豊富なメンテナンスの経験や仕事のやり方、進め方を教えていくことが出来るだろうと思ったからだ。


前の会社でも、色んなアイデアを持って彼の経験を
後輩たちに伝えていこうと、精力的に実践して来たことから、転職後も十分にやりがいのある仕事になると思ったのは間違いない。

 


転職後の業務

いよいよ、彼は会社を定年退職でやめて、前述の常駐協力会社で働くことになった。


従業員は10名程度。中途採用で入社した若手と年配者が混在している。そして、十分に技量を有する経験者もいれば、経験の浅い人たちもいる。


そして、その会社は、工事の見積、計画を行うとともに、受注した工事を下請会社を使って施工する。したがって下請会社の管理監督を行う役割も有している。


当然であるが、どの工事も無事故無災害で決められた工期の中で品質の良いものを施工することの責任を負う。


彼は、この会社で受注した工事の安全管理を主に行なっている。工事の計画段階でのリスクアセスの実施、その安全対策の検討、現場での安全対策の実施、作業員の安全意識などを中心にチェックを行い、自社の監督者に対して指導していくことにある。


最も大事なのは、自社の監督者の技量だ。それはメンテナンス会社であれば、どこも同じであるが、下請の管理を含め、その工事施工における全ての責任は監督者にあるからだ。


客先との調整、スケジュール管理、作業員への指示、指導など、やるべき事は沢山あり、工事の出来不出来は監督者次第であるとも言える。


彼は工事の安全管理を通して、監督者の技量向上、若手監督者の育成に努めていくことになる。前の会社の彼の経験、スキルがあれば、それらの業務をこなすだけの実力は十分に備えている。


彼は、高い志を持って、転職先で意欲的に仕事をはじめたのである。


 


転職して1年が経過

先に述べたように、彼はこれまでの経験を生かして、教育のための資料を自ら作成し、自社の監督者たちに教育を実施した。また現場に行けば、不安全な状態を指摘し、監督者へ指導する。現場のあるべき姿を目指して、日々、奮闘した。


転職した会社は、設立して数年と言いながらも、丸っ切りの新人集団ではなく、一人ひとりの職歴はさまざまであり、年代も若い人からベテラン、再雇用レベルまでと幅広く、色んな経験を有する人材が集まっている。


そのせいか、全員の気持ちを一つにし、改善に向けた取り組みを全社上げて進めていくことには慣れていない。まだまだ発展途上の会社でもあった。



この点は、彼から見ると、自分がその弱い部分を改善し、核となる人材を育成し、会社としての実力を底上げしていこうと考えていた。


前の会社には不満もあったが、工事の施工や管理技術という点では成熟している会社であり、仕事のやり方、マネージするシステムに関しては、今の会社とは大きな実力の差がある。そういうレベルまで引き上げることに、彼のやりがいがあったのである。


下請の監督、作業員たちにも、彼の経験や知識、考えを伝え、徐々に浸透していった。作業員たちからも積極的に声を掛けられるようになった。こうして信頼されるような関係を構築することが出来るまでになった。


ところが、1年を過ぎたあたりから、彼はなかなか上手くいってないことを愚痴にこぼすようになった。


 


決断

問題は、自社の監督者たちの技量にあったようだ。簡単に言うと、彼が当初イメージしているレベルに監督者たちが到達してないという。


そもそも、色々な職歴を持つ、中途採用者たちが集まっている会社であり、技量もまちまちである。そんな彼らに対して、本来あるべき姿を示し、理解させようと努力して来たはずだ。


そして彼ら自身による自助努力を期待したのだと思うが、実態は彼が思うレベルまで達していない。努力をしようとしているのかどうか…結果として改善の成果が見えてこない。


もちろん、すぐに改善するとは思ってないと思うが、彼の努力に報いる人材がいなかったのかもしれない。ここに教育の難しさがある。


大きな会社であれば、大勢の社員からリーダーシップを発揮し、自ら考え、改善を実行していく人材が必ず出てくるが、小規模な会社では限られた人材の中でそういう社員を育てなければならない。


彼は自分の限界を感じ始めたのである。いくら努力をしても、期待通りにいかないと、あきらめの気持ちに変わっていく。誰も自分のレベルを理解出来ない、理解しようと努力する人がいないと思い始める。


大きな会社で働いていた人間が小規模な会社に、同じような仕組みを取り入れようとした。もちろん、丸っ切り同じことを教えようとしたのではないと思うが、どこかに無理があったのかもしれない。人材育成は双方の努力が必要であるが、意識のズレや噛み合っていない部分があったのかもしれない。



彼を受け入れた会社も、当然、彼の知見、経験、そしてマネージする力を、自社の取り組むべき改革の一つとして位置づけ、社員が彼から吸収し、自ら変わっていくことを期待したと思う。


この2ヶ月後に、彼は転職先を辞めることを決意したのである。転職して約1年半のことである。


大変、残念な結果になってしまった。人間、楽な方に流されがちだが、彼から教わったものを少しでも仕事に生かすように努力する社員がいることを願っている。


人生は決断の連続である。何が良かったのかは誰も分からない。そういう意味では運命かもしれないが、選んだ道を後悔しないよう、一生懸命に努力するだけだ。

 


以上、ご覧いただき、ありがとうこざいます。
ヨッチでした。